2016年3月3日木曜日

良い雑誌に投稿するということ

PEPS大気水圏科学セクション編集委員の大手 信人です。

僕が初めてちゃんとした雑誌に論文を投稿したのは1994年でした。投稿先はAmerican Geophysical Union のWater Resources Researchで、当時は印刷した原稿を何部かクリップで留めて、郵便でワシントンDCまで送っていました。一部始終をいまでもはっきり覚えています。担当してくれたeditorはUniversity of VirginiaのGeorge Hornbergerさんでした。当時は英文校閲のビジネスもなかったので、アメリカ人の友人に見てもらってはいましたが、つたない英文の原稿を、辛抱強く読んでくれて査読に回してくれました。3ヶ月くらい後だったでしょうか、査読が終わってdecisionが送られてきましたが、結果はreject。ですが、Hornbergerさんのコメントは、査読者のコメントをよく読んで、それに対応して、もう一度投稿しなさいというものでした。それだけではありません。手紙(文字通り、手紙です。紙に印刷されたLetter。)には、どのようにリバイズすればいいのか、どうしたらもっと読者に情報がうまく伝わるのか、それを事細かに指摘し、僕に教えてくれていました。それからまる一年の間に、リバイズ、再投稿、major revisionの指示、リバイズ、再々投稿、minor revisionの指示、再々再投稿を経て、ようやくacceptをもらいました。その間、Hornbergerさんは、僕に何度も的確なリバイズの指示をだしてくれましたが、それよりありがたかったのは、論文を完成させるように、ずっと僕を励まし続けてくれたことでした。いってはなんですが、そのころの自分のボスよりもずっと心強い存在でした。

当時、僕は駆け出しですから、Hornbergerさんがどれほどの人だったかをわからずに、親切なeditorにあたってよかったな、などと思っていましたが、だいぶたってから、彼がHolton Awardをはじめ、数々の賞を受賞している水文学のbig nameだったとわかりました。改めて、ああ、ありがたかった、さすが、Georgeと思いました。

Beginner’s luckだったかもしれません。しかし、定評のある一番良い雑誌のeditorial boardには、ちゃんとした人がいて、その人が回すreviewerもちゃんとした人で、投稿者の気持ちも読者の気持ちもちゃんと考えているのだということを、国際誌への最初の投稿で勉強させてもらいました。良い雑誌に投稿するということは、そのようなことであると、これから論文を書いていこうという若い人達にわかって欲しいし、自分がHornbergerさんのようなeditorでありたいと思います。


PEPS大気水圏科学セクション編集委員 / 京都大学 大学院 情報学研究科 大手 信人


0 件のコメント:

コメントを投稿