インパクトファクター(Impact Factor, IF)が皆様の研究成果の評価に使われるようになり,戸惑いを持つ方も多くおられるかと思います.この引用索引という指標を科学界に広めたのはEugene Garfield博士で,1955年にこれに関する最初の論文が発表されました.この指標は,もともと図書館で雑誌を購入する際の判断基準の一つとして考案されました.皆様もご存知のように,IFは,ある雑誌に掲載された論文がどの位引用されたかというデータを通じて,雑誌が1論文あたり平均何回引用されているかを算出するものなので,「雑誌を評価する指標」です.
しかしながら,最近適切でない使い方がしばしば見受けられるようになってきました.大学設置基準が改正され,大学の自己評価が義務づけられました.高いIFを持つ雑誌に掲載された論文を集めて,大学の主な成果とする風潮や,雑誌のIFを足した合計などを各々の教員の評価に使用したりするのも,これに含まれます.特に,後者の使い方については,もともとIFの考案者であるEugene Garfield博士が「このような形で利用すべきでない」と注意喚起されているそうです.
PEPSでは,地球惑星科学の海外の一流誌に匹敵する位のIFを獲得すべく努力をしています.その理由は,IFは「ジャーナルの評価」としては,それなりの意味をもっているからです.PEPSはオープン・アクセスのジャーナルとして,投稿料をいただきながら,世の中にある商業誌との競争をしていかなければならないという環境の下で出版されています.そのため,一流誌に匹敵する位のIFは必須となります.ただし,むやみに高いIFを狙わねばならないという商業的意図はないので,AGU(アメリカ地球物理連合)のような良心的な学術誌を目指していきたいと考えています.
さて,AGUにおいても,以前はジャーナルを自社出版してきましたが,現在ではWiley社より出版されています.出版情報の流通の効率化が目的であったと聞いており,学会自身が学術雑誌を直接経営していくことが昔より難しくなり,出版事業がプロ化してきたことを反映しているのかもしれません.現在PEPSは,Emerging Sources Citation Indexという,地域的に重要なジャーナルや新しい注目分野のジャーナル3600誌をカバーする,IFが付与されないデータベースに採録され,さらに,IFの付くScience Citation Index Expanded(28,000誌)への登録申請書を提出して,審査を待っている段階です.現在,PEPSの投稿者の多くは,日本地球惑星科学連合大会などに参加された方やその周辺の方々ですが,Science Citation Index Expandedに登録され,IFが付与されれば,世界中の研究者がPEPSを知ることとなり,海外からの投稿,海外の方によるPEPS論文の引用も増加すると期待されます.そのような「広告」という観点からもIFをもつことは重要と考えられます.なお,IFを算出する部門は,今年Thomson Reuter社よりClarivate Analytics社に売却されたので,IFは今後Clarivate Analytics社より発表されます.
PEPS地球生命科学セクション編集長 / 東京大学 大気海洋研究所 川幡 穂高 |