PEPS総編集長の井龍です.
PEPSのブログを開設することになりました.最初は総編集長という御指名ですので,思うところを書かせていただきたいと思います.
最近,学会に参加すると必ず話が及ぶ話題に,雑誌の購読問題があります.学術雑誌の購読料金が,毎年,値上げされるため,購読を断念する雑誌が増加し,研究に支障をきたしているという話題です.このようなケースは,旧七帝大クラスの財政規模の大きな国立大学法人でも例外ではなくなっているようです.
しかし,出版社がこれほど強気の(というよりは強引な)販売戦略を採り続けることができる要因の一つとして,われわれ研究者側が,研究成果の公表(つまり,論文の出版)を,そのような出版社に依存していることが挙げられます.出版社は,われわれの足下をみているのでしょう.
この流れに歯止めをかける新たな出版形態として出てきたのが,オープンアクセス電子ジャーナルです.PEPSは,このような学術出版に関する趨勢を顧慮し,オープンアクセス電子ジャーナルとしました.
一方,PLOS
ONEの成功を受け,多くの出版社がオープンアクセス電子ジャーナルに参入していることは御存知の通りです.これらの電子ジャーナルは,オープンアクセスメガジャーナルと呼ばれ,掲載論文数が多く,広領域をカバーし,科学的正確さが満足されている論文を速く,効率的に出版することが特徴です.その反面,論文の重要性・影響力は考慮されません.さらに,近年,創刊されたPeerJ
というオープンアクセス電子ジャーナルは,著者は一度投稿料を支払えば,一生涯無料で投稿・出版ができるビジネス・モデルを採用しました.
よって,ありふれた見解になってしまうのですが,PEPSが成功するためには,質の高い論文,しかも,メガジャーナルで考慮されていない重要性・影響力がある論文を出版することが肝要だと考えています.
機関リポジトリが充実してきていることに加え,オープンアクセス電子ジャーナルが充実すると,研究者だけでなく,市民も専門的な論文にアクセス可能となり,今後,社会と科学の関係が大きく変化する可能性もあると思います.私は,その変化が市民の科学の理解の上昇に結びつくことを願っています.
0 件のコメント:
コメントを投稿