新年明けましておめでとうございます.今年も,PEPSをよろしくお願いいたします.
さて,新年早々非常に重い話題ですが,今回は不適切なオーサーシップと二重投稿について述べてみたいと思います.
ここ数年,研究不正の話題が多く報道されるようになりました.STAP細胞に関する論文の件はあまりにも有名ですが,ウェブで検索すると非常に多くの事案がみつかります.ある分野では,論文の約7割に,多かれ少なかれ研究倫理上の問題があるとの指摘もあります.このような事態を受けて,2015年2月には,日本学術会議より「科学の健全な発展のために-誠実な科学者の心得-」が,8月には文部科学省より大臣名で「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」が発表されました.また,各学会から出版されている学会誌においては,不適切なオーサーシップや二重投稿の定義を明確にし,そのような行為の発生防止を呼びかけるよう,日本学術会議から要請がありました.これは,皆様が所属されている学協会および学協会誌でも例外ではないと思います.
学術会議および文科省のガイドラインで示されている適切なオーサーシップ(オーサーとして適格であるために満足すべき要件)は,非常に厳しい内容になっています.これは,オーサーとしての責任を果たしていないにも関わらず,オーサーとして名前を列ねている事例が非常に多く(というより,蔓延しており),看過できなくなっているためだと思われます.特に,ギフト・オーサーシップに関しては,年配の研究者の理解度が低く,また両ガイドラインに対する反発も大きいようです.しかし,「オーサー全員が論文の内容に責任をもつこと」は,科学者として当然の行為であり,その厳格な適用が世界的な潮流となりつつあることを理解すべきだと思います.さて,PEPSは50学協会が所属する日本地球惑星科学連合(JpGU)の雑誌であり,全学協会の事情を勘案したガイドラインを作成するのは,簡単ではありません.そこで,昨年は,各学協会の動向を注視していたところですが,今年は,PEPSのガイドライン作成に向け,まずはエディターによる議論を始めたいと思っております.連合の会員の皆様に御意見を求めることもあるかと思いますが,その際には,是非,御協力下さい.
一方,二重投稿や剽窃への対応策として,PEPSが出版のプラットフォームとしているSpringerOpenでは,剽窃防止ソフトウェアiThenticateが導入されています.皆様が投稿した原稿の全てのバージョンが自動的にiThenticateでチェックされ,これまでに出版された学術論文だけでなく,ウェブに掲載されている文章とのマッチ率が計算・表示されます.残念なことに,このソフトウェアは一定の成果を挙げており,数編の悪質な投稿原稿を発見することができました.これとは別に,二重投稿に関しては,国内の査読なしジャーナル掲載論文との内容重複の可否について,分野間で認識の不一致があり,今後の議論が必要な状況です.
不適切なオーサーシップと二重投稿のような非倫理的行為は決してなくなるものではないと思いますが,大多数を占める真面目な研究者・院生・学生が不利益を被らないよう尽力して行きたいと思います.
ちょっと堅めの年頭挨拶でした.
PEPS総編集長 / 東北大学大学院 理学研究科 地学専攻 井龍康文 |