2015年8月31日月曜日

進化し続けるPEPS

今年の4月よりPEPS固体地球科学セクション編集長を務めております吉岡 祥一です。
宜しくお願いします。

今年の1月、神戸で阪神・淡路大震災20年企画シンポジウムのお手伝いをさせて頂いていた折、学会を代表してシンポジウムにお越し頂いていた日本地震学会会長で、PEPSの編集委員でもある、加藤 照之氏から今回のお話を頂き、東大地震研究所の所長になられた同セクション編集長の小原 一成氏の後任を務めさせて頂いています。投稿された論文を適切なハンドリング・エディターに割り当て、査読プロセス及び結果のチェックを行うことや、定期的に開催される編集長会議への参加が主な仕事です。まだまだわからないことも多く、手探りの状態ですが、微力ながら尽力していきたいと思います。

PEPSは、よりよい国際誌を目指してソフト・ハード両面から日々進化しつつあります。今日は最近の取り組みの一端を紹介したいと思います。

PEPSでは、編集長会議で、日本学術会議が今年3月に公表した「回答 科学研究における健全性の向上について」を踏まえて、オーサーシップと二重投稿について議論しています。オーサーシップとは、どのような要件を満たしている研究者が著者になりうるか、ということです。オーサーシップについては、今後、本回答を踏まえて議論し、対応していく予定です。また、二重投稿とは、既に出版された、または他の学術誌に投稿中の論文と本質的に同一の内容の原稿を投稿する行為のことです。PEPSでは、二重投稿に加えて、剽窃、捏造など、不正論文が投稿された場合、どのように対処するかについて、編集長ならびに編集委員の間で議論し、ガイドラインを定めました。
剽窃に関しては、iThenticateというソフトを使って、既に出版された論文やweb上の文章と照合することで、不正の発見を容易にしています。最近、このソフトが論文の投稿・査読プロセスをweb上で行うシステムに組み込まれ、総編集長・セクション編集長のみならず、すべての編集委員が利用できるようになりました。

出版社であるSpringerの制作部門も出版の迅速化に努めており、先日、出版された論文では、正式受理から出版までの日数が12日と、過去最短を記録しました。また、最近、私が扱った論文では、その論文の質の高さに加え、ハンドリング・エディター及び査読者の迅速な対応と協力により、論文の投稿から暫定受理までの日数が33日と驚異的な数字を記録しました。

このように、PEPSは時代に即した一流の国際誌を目指して日々進化を遂げつつあります。しかしながら、PEPSが成熟した国際誌となるためには、原稿の投稿や査読の受諾を含め、皆様からのご支援が欠かせません。今後とも、ぜひとも温かいご支援を賜りますよう、宜しくお願いします。

PEPS 固体地球科学セクション編集長 / 神戸大学 都市安全研究センター 吉岡 祥一



2015年8月19日水曜日

PEPSの命運を握る査読者(レフェリー)

PEPS宇宙惑星科学セクション編集委員の長妻 努です。

私はPEPSで初めて論文誌(ジャーナル)の編集に携わりました。PEPSが良いジャーナルとなるよう、微力ながら頑張っています。
これまで、各セクション編集長や外国の編集委員の方々の格調高いブログが続きましたので、ここらで少し「箸休め」ということで、新米の私に白羽の矢が立ちました(笑)。軽い気持ちでお読み頂けると幸いです。

新米編集委員の私が、この仕事で頭を悩ませているのは、投稿論文の査読者(レフェリー)の選定です。論文の内容に目を通し、誰にレフェリーをお願いするのが良いかを考えます。自分の専門分野ど真ん中であれば、「この論文はAさんとBさんにお願いしよう!」と比較的スムーズに判断ができるのですが、自分の専門から少し離れている場合は、投稿論文の分野の研究者をネットで検索・確認しなくてはなりません。Mysen先生も書いておられますが、2名アサインする場合に、それぞれがなるべく違う世代、バックグラウンドの方にお願いするように心がけることも大切です。
レフェリーを依頼する電子メールを送るときは、祈るような気持ちです。でも、すぐに決まらないことが良くあります。「忙しいので、無理です。」、「自分よりもCさん、Dさんが良いですよ。」と返事があれば、断られても次に進めます。時々、一切の返事を頂けない場合もあります。その時は、心が折れそうになります。一からやりなおしです。
また、稀ではありますが、レフェリーを引き受けた方から何の連絡も無いまま、締切りを過ぎても審査レポートを戻してもらえない場合もあります。現在忙しい中、頑張って査読してくれているのではないか?と思うと、締切りを過ぎたからと言ってすぐにお断りしてしまうのも良く無いのでは?と思う半面、ずっとレポートが来るのを待ち続けてしまうと、審査結果を心待ちにしている論文の著者に対して申し訳ないのでは?とも思って悩みます。

投稿論文の査読は、ジャーナルの品質・価値を大きく左右する要素の一つだと思います。査読を通じてその論文の価値を適切に判断し、著者に対して改訂の助言や、編集委員会に対して採択の可否について助言を与えて頂けると、ジャーナルの品質の維持に大きく貢献します。また、査読がスムーズに行われれば、原稿受理から出版までを作業を無駄なく進めることができ、一刻も早く自分の研究成果を世に示したい論文著者のニーズに応えることができます。
一方で、査読は研究者コミュニティの完全なボランティアです(編集委員も、ですが。)。PEPSでは、1編の投稿論文に対して、通常2名のレフェリーで審査するようにしています。PEPSは創刊1年の今年4月までに約100編の論文を受け付けましたから、既に200名を超える方にレフェリーをお願いしたことになります。この作業に協力して下さっている研究者の方々には、本当に頭が下がる思いです。

国際誌で長年にわたりエディターを務められた上出洋介JpGUフェローは、著書『国際誌エディターが教えるアクセプトされる論文の書きかた』の中で、論文の査読に関して「同時に五つくらいの論文のレフェリーまでは、引き受けていただけないものでしょうか?」ということを書いておられます。この文章を初めて読んだ時、同時に五つもの論文を査読するのは、他に何も仕事を抱えていなくても、大変な労力ではないかと思いましたが、編集委員の立場で考えてみると、これくらいの心構えで研究者がスムーズに査読を引き受けてくれると大変素晴らしいとも思いました。

というわけで、本ブログを読んでいる研究者の皆さん、PEPS編集部から査読の依頼がありましたら、依頼を断らずに喜んで引き受けてくださいね(笑)。どうぞよろしくお願い致します!


PEPS宇宙惑星科学セクション編集委員 / 情報通信研究機構 電磁波計測研究所 長妻 努

2015年8月11日火曜日

PEPSの日本語空間


PEPS宇宙惑星科学セクション編集長の倉本 圭です。

公用携帯に一本の電話が入り、「倉本さん、今後JpGUPEPSが刊行されるのは知っているね。ついてはセクション編集長を引き受けて欲しいのだけど」。私はこれでPEPSの編集に携わることになりました。PEPSは欧文誌です。そこで日本語空間というのはすこし脇道的かもしれませんが、ここで宣伝をさせてもらいたいと思いました。

PEPSの編集部では、このブログやfacebookなどを通じてPEPSの最新情報が日本語でも気軽に手に入るように、工夫を凝らしています。特に私がお勧めなのはPEPSホームページにある日本語ハイライトです。こういうサービスは一部欧文誌にも存在していますが、PEPSのような地球惑星科学総合誌では、他にないと思われます。英語ではよく読まないと頭に入らない隣の分野の研究も、日本語ならばパッと理解できる。PEPSのように質にこだわって編集し、分野横断的に論文が掲載されている雑誌では、隣の分野の研究が即時に把握ができ、たいへん効果的です。

非日本語圏の著者の場合、実はこの日本語ハイライトの訳出・執筆はボランティア的に行っています。私も人にお願いするだけではと思い、一件ですが担当させてもらいました。多少の時間を食いますが、この作業からも当該分野のことが把握できます。PEPS日本語ハイライトは、こうして皆さんに少しずつお手伝いいただくことで成り立っています。

地球惑星科学の入口に立っている人がいた時に、PEPSの日本語ハイライトから、地球惑星科学の最新の全容を掴んでもらう、そんな風になったら理想と思います。皆様の投稿とハイライト作成へのご協力をお願いします。

PEPS 宇宙惑星科学セクション編集長 / 北海道大学大学院 理学院 宇宙理学専攻 倉本 圭